東洋学

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東洋学(とうようがく)とは、「東洋」と呼ばれる諸国・諸地域を対象とする学問研究のことである。欧米でいう「オリエンタリズム」(Orientalism)もしくはオリエント学Orient StudyOrientalics / Orientalistik)の訳語とされ、「東方学」(Eastern Study)とも称される。

概要

以下に述べるとおり東洋学の対象とする領域はそれほど自明ではない。まず、地理的範囲の問題がある。日本において漢語の「東洋」が意味するところは、西洋以外の地域であり、しばしば地理学でいうアジア(アジア洲)と同一視されている(しかし本来中国で「東洋」の語が意味していたのは、中国から見た東洋、すなわち日本などの近隣地域である)。一方「東洋」の原語とされる「オリエント」は、古来ヨーロッパから見た「東方」諸地域を意味するのであり、古典古代においては東方とみなされたエジプト西アジアなどが「オリエント」の内容(エジプトは含まれないという見解もある)であり、さらにその後ヨーロッパ人の地理的視野が拡大するにつれ、次第により拡張されてゆき、今日ではアジア全域および(エジプトの外延部を含む)北アフリカが「オリエント」の語が表す意味である。例えば古い歴史を持つロンドン大学の「オリエント学(東洋学)学校」(School of Oriental Studies)や1873年パリで第1回大会が開催された「国際オリエント学会議」(International Congress of Orientalists)でいう「オリエント」とは上記のような意味内容であり、当然そのなかには日本も含まれる(現在では指示する地域があまりに拡大しすぎたことを理由に、前者は「東洋アフリカ学学校」(School of African and Oriental Studies)、後者は「国際アジア・北アフリカ人文科学会議」(International Congress of Human Sciences in Asia and North Afirica)と改称されている)。したがって「オリエント」は、必ずしも日本でいう「東洋」とは完全に重なり合わない。また翻訳によるギャップも存在する。日本で「オリエント」が意味するのは、欧米でいう広範な地理概念ではなく、先述したメソポタミア・エジプトなど、古代の地中海ヨーロッパの人々がオリエントと称した諸地域に限定されているのが一般的である(つまり日本語でのオリエントは歴史的地域の概念である)。また先述の通り欧米の東洋学(=オリエント学)には、近東地域を対象とした狭義の「オリエント学」(古代オリエント学)、インド学中国学と並んで日本学も含まれるが、日本の東洋学には日本学は含まれない。

第二に時期的範囲の問題もある。東洋学(もしくはオリエント学)が対象とするのは、東洋(オリエント)における言語・文学・宗教・思想・芸術などの文化の歴史的側面であり、東洋と呼ばれる諸地域の現状を研究するものではない。一般に東洋学とは、「東洋」諸地域における古典学・文献学的研究のみを意味し、これらの地域の(特に政治・経済・社会などの)現状を分析する研究は、一般には東洋学には含まれないとみなす傾向が強い。古典学でない現状分析的研究は、「アジア(の)地域研究」「アジア学」と呼ばれることが多く(ただしその名称は十分に定着しているとはいえない)、場合によってはアジア各国・各地域を対象とする地域研究(中国研究・中東研究・インド研究など)に分離されると考えられている。これと同様な議論は、東洋学に包括される各地域の研究、例えばインド学や中国学にも生じており、古典的・伝統的・歴史的文化の研究と、同時代の(地域研究的な)現状研究を一つの学問分野にまとめることが可能か否かが論じられている。ただ、後述するように(古代)オリエント学、エジプト学アッシリア学などについては、その研究対象は歴史的存在である古典文化の研究に限定されていることは当然の前提となっている。また他に、歴史的領域であっても近代以降(すなわち列強の「東洋」進出以降)については「東洋学」には含まれないという見方も根強く存在する。

なお、東洋学の原語の一つとされる「オリエンタリズム」は、近年カルチュラル・スタディーズもしくはポストコロニアル研究において異なる意味をもって使用されており(本来の意味は「オリエント学」もしくは「オリエント(東方)趣味」である)、注意を要する。

歴史的展開

征服と起源の探究

東洋学は、「東洋」諸地域における欧米列強(のちに日本も加わる)の文化的征服の願望と自らの文化的起源の探究と強く結びついて発展したという見方がある。

日本の東洋学

近代以降成立した日本の東洋学は、漢文史料の読解・分析に優れ、主としてこれを通じて大きな貢献をなしたという特徴をもっているが、それは同時に日本の東洋学の限界を規定したといわれる。

東洋学の諸領域

主要な東洋学研究機関

主要な東洋学者

関連書籍

関連項目